見事な一首

私の田舎に国語の教科書に出てくるような作家の先生(小川国夫さん)がいらして、その作家の奥様に英語を習いにご自宅へ通っていた。その縁でうちの母親はずっと奥様と交流があって、何年か前に作家の先生が亡くなって、今度は奥さんが本を書いたら賞を頂いたという事で(もう80と85とかの年齢)。足腰が大変でうちの母親とその友人が代理で受賞式へ行ったのが今週の事。その奥様がユニークが方で高校生の頃は、どこの星の人?こういう人がこんな田舎にいるんだ!っていう人で、ご自宅もすごい立派なお屋敷で物書きの家ってこういう感じなんだ、、とか家の匂いとか、自分の家とは全然違うのが新鮮だったり。
小川さんの本は母親がくれるというのでいいのですが、林真理子さんの評が褒めているのかどうなのか不思議な評でした。で、もう一人、受賞した方がいました。そちらの方が妙に引っかかって、サイトなどでも調べて本の説明文を読んでいるだけで、ヤバイ、これは購入せねばという気持ちになって即購入。
それは下の歌。

「手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が」
夫・永田和宏さんが書き留めた河野さん最後の歌

すごい衝撃。なんとも言えない思いが伝わる一首。
あなた、、が二度出るのですが、これが「あなたと呼んで、あなたに触れた時に」 と考えるか、「あなたと娘」の事を言っているのか分からないけど、「あなた」を二度言う事ですごく強調されている。、そして、息をするのも苦しい状況が伝わる。。こんな歌を亡くなる前に詠むとは・・。

歌人と言われている人を知らなくて、たまたまの出会い。河野裕子さんの事を色々調べてしまいました。夫妻とも歌人、歌と文章がつなぐ一冊であります。
本当にこの人で良かったのかな?この人が自分の相手だったのか?それは死ぬ時まで分からないものなのかもしれません。こんな歌を死ぬ間際に残していくということは、、本当に愛し合っていたんだなと思います。著書の旦那さんがはっきりと「私は妻に愛されていた」と言いきれる、素敵な関係。我が家も子供がなくて常に二人で仲がいい方だと思います。けっこう夫婦が仲良しすぎると相手を残して逝く時が訪れてしまうという事が嫌なんです。。同時に死にたいなって思ったり・・・それが無理だから嫌なんですよね。。
旦那さんが返した歌は「歌は遺(のこ)り歌に私は泣くだらう いつか来る日のいつかを怖る」
(いつか来る自分が死ぬ時を恐れる、つまり奥さんを忘れてしまう時、、。はあー。)

歌に私は泣くだらう―妻・河野裕子闘病の十年

歌に私は泣くだらう―妻・河野裕子闘病の十年